いらない不動産や土地を相続…損しないためにはどうしたらいい?
こんにちは、札幌の不動産会社「ジモット」の髙橋です。
「親が亡くなり不動産を相続することになってしまった」「子どもに田舎の不要な土地を相続させたくない」など、不動産相続にまつわる問題はさまざまです。
全ての不動産が自分にとって価値があるものというわけではありませんよね。
自宅から遠く自分が使う予定のない家などは、一旦相続してしまうとただ持っているだけで固定資産税がかかり、損をしてしまいます。
もし不動産を相続することになった際に、資産価値が見込める物件なら売却して利益を出すのが1番ですが、他にどのような方法があるのでしょうか。
今回は、いらない不動産を手放したい場合の方法について解説します。
目次
相続した不動産を手放す方法
1度相続すると所有権が自分に移転登録されます。
既に所有権移転して相続された不動産は、後から「やっぱりいらない」と放棄することができません。
そんな相続後の土地や建物を手放したい時には以下の3つの方法があります。
・売却する
・贈与する
・寄付する
すぐに売却すると税金がおトク!
相続してすぐに売却すると、税金面でのメリットがあります。
1つは、固定資産税(毎年1月1日時点で不動産の所有者に対して課税される税金)を払わなくて済むことです。
相続してから売却までの所有者である間に1月1日を迎えない場合は、固定資産税の支払い対象ではなくなります。
売却益にも税金がかかる!譲渡所得税
もう1つは、譲渡所得税に関するメリットです。
譲渡所得税とは、土地や建物を売った時に得た利益に対する税金のことで、所得税と住民税を指します。
この税率は、不動産を所有している期間により異なります。
不動産を売却した年の1月1日時点で、不動産の所有期間が5年を超えていた場合は「長期譲渡所得」となり、5年以下の場合は「短期譲渡所得」となります。
この所有期間というのは、相続後の名義人(相続を受けた側)の保有期間、つまり相続してから売却するまでの期間ではなく、被相続人(相続をした側)の保有取得時期がそのまま引き継がれ、所有期間としてみなされます。
したがって、被相続人が取得した時から、相続で取得した相続人が売却した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります。
譲渡所得税の特例措置
せっかく売却しても税金がさらにかかって逆に損をするのでは・・・と思うかもしれませんが、売却時にお得になる場合があります。
この譲渡所得税は、相続後3年以内に売却することで税金がお得になる2つの特例措置があり、税金を軽減できる特例を利用できる可能性があるからです。
不動産の相続時に納めた相続税の一部を取得費として計上できるようになる「相続税の取得費加算の特例」という制度と、1人暮らしで亡くなった後に相続によって取得した空き家を売却して得た利益から3,000万円を控除できる「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」という制度とがあります。
相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
説明した通り、相続により取得した不動産を売却して譲渡所得が出た場合には、譲渡所得税がかかります。
この譲渡所得を計算する際には、土地や建物を売った金額から取得費、譲渡費用を差し引きます。
相続してすぐに不動産を売却すると、相続税を払った上にさらに譲渡所得税を支払うことになるので、一定条件にあてはまる場合は相続税を一部、取得費用とみなして良いですよ、というものです。
相続人の負担を減らすための制度で、譲渡所得にかかる譲渡所得税を節約することができます。
その条件とは、「財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売却していること」です。
つまり、相続税の申告期限から3年以内に売却が完了している必要があります。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
1人暮らしをしていた親が亡くなり空き家になってしまった家を相続し、売却する場合に税金が控除される制度です。
これを、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例といいます。
空き家対策としての制度のため、相続前まで1人暮らしをしていたので居住者がいなくなった建物または土地を相続し、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売るものに対して適用されます。
建物の場合相続後に解体して更地にした場合でも適用になります。
こちらは先に述べた「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」 よりも金額が大きく、適用されると譲渡所得から最大で3000万円が控除されます。
譲渡所得が3000万円以内の場合は、税金は課税されなくなるため、条件に当てはまる場合は是非利用したい制度です。
特例の対象となる「被相続人居住用家屋」および「被相続人居住用家屋の敷地等」、つまり建物と土地は以下です。
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと
・区分所有建物登記がされている建物でないこと
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと
売却のタイミングがポイント
前述2つの特例措置は併用することができませんが、軽減できる金額が「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例 」より、最大3000万円まで軽減できる「居住用財産を売ったときの特例」のほうが、節税できる費用が大きくなりますので、当てはまる場合は後者の方がおすすめです。
不動産は売ろうとしてすぐに売却が完了するわけではないため、長期間迷ったあげく節税の機会を逃す・・・なんていう事にならないように、しっかり考えておきましょう。
相続した物件を売るとしたらどれくらいの金額になるか調べたい場合は、不動産業者に査定依頼をしてみることをおすすめします。
査定価格が決まるポイント(他記事へのリンク)についてもチェックしてみてください。
いらない不動産を贈与する場合
相続後の不動産を放棄することはできませんが、誰かに贈与することはできます。
お金を払ってまで欲しい人はいないけれど、もらえるなら欲しいという場合があるかもしれません。
贈与する場合は、後々のトラブルを防ぐためにも贈与契約書を交わすなどしておいたほうが良いでしょう。また、所有権の移転登記も行いましょう。
不動産の評価が110万円以上の場合は、贈与税が発生します。
(贈与財産価額 − 110万円)× 税率 − 控除額
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0万円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600万円以下 | 30% | 65万円 |
1000万円以下 | 40% | 125万円 |
1500万円以下 | 45% | 175万円 |
3000万円以下 | 50% | 250万円 |
3000万円超 | 55% | 400万円 |
贈与税の計算は相手との関係により税率が変わります。
売却が見込めないような不動産の場合は、親戚や近隣の人などに贈与を持ちかけても良いかもしれません。
いらない不動産を寄付する場合
買う人も、もらう人もいないような不動産の場合、寄付という方法はどうなのでしょうか。
まずは自治体に相談して、調査により寄付を受けるかどうか判断されます。
ただし自治体への不動産の寄付は、自治体にとって利用目的が明確でない場合は受け付けてもらえない場合が多いでしょう。
売却しても買い手のつかないような不動産は活用自体が難しい事が予想されるため、自治体にもいらないと言われてしまう可能性が高いです。
また、不動産は自治体にとっては税の収入源。
そのまま所有して税金を納めてもらうほうがメリットがあります。
まとめ
いらない不動産を相続した場合の対処法について解説しました。
相続後は放棄することができないため、売却、贈与、寄付から選んで土地や建物を手放すことになります。
自分にとって1番デメリットの少ない方法を選んで、方法によってはトラブルにならないようしっかりプロにお任せするのがよいでしょう。