賃貸アパート売却の減価償却費って?計算式で分かりやすく徹底解説
こんにちは、札幌の不動産会社「ジモット」の髙橋です。
アパートなど不動産の賃貸や売却において、「減価償却」というのは理解しておかなければいけないことのひとつですよね。
ただ、減価償却についてご自身で調べようと思っても「難しくてよく分からない」などと感じる方も多いのではないでしょうか?
減価償却費は、譲渡所得を計算する際に使用したり、節税にも関わってくる重要なものです。
この記事では、事業用不動産の減価償却について知りたい方向けに、出来るだけ分かりやすく簡潔にまとめ、具体的な計算式や例を記載しております。
ぜひ、ご自身の状況に合わせながらご覧ください。
目次
減価償却費とは?
「減価償却」というのは、アパートの建物部分が年数の経過によって劣化・価値が減少していく分の金額を、帳簿上の建物価格から減らしていく会計処理のことです。
あくまでも会計上のルールとしての費用なので、実際の建物の減耗や劣化に相当する金額でもなければ、その分のお金の支払いを必要とするものではありません。
ただ、帳簿上は利益が減っていくことになります。
また、アパートの土地部分については減価償却を行う必要がありません。
実際の土地価格は、市況によってその時々で変化がありますが、会計上、土地は年数の経過に関わらず、価値が下がらないと考えられるためです。土地の借地権なども同様です。
そのため、不動産の減価償却は「建物価格」と「土地価格」を分けて、建物価格にのみ減価償却を行います。
減価償却費の計算方法
事業用不動産の減価償却の計算は、取得した時期によって計算式が異なります。
取得時期 | 計算方法 | 備考 |
1998年(平成10年)4月1日以降 | 旧定額法 | 建物の償却方法は定額法のみ |
2007年(平成19年)4月1日以降 | 定額法 | 1円まで償却可能 |
2012年(平成24年)4月1日以降 | 定額法 | 200%定率法の開始 |
2016年(平成28年)4月1日以降 | 定額法 | – |
※個人の場合の表になります。また、付属設備を含めるか含めないかで計算方法が異なる場合があります。
大きく分けて、2007年(平成19年)の3月31日以前取得のものが旧定額法、4月1日以降取得のものが新定額法となりますので、次の章で具体的な計算式をご紹介いたします。
2007年(平成19年)3月31日以前に取得した資産の計算式
減価償却費の計算方法は、以下のようになります。
減価償却費=(建物購入価額-残存価額)×償却率×業務に供された月数÷12
= 建物購入価額×0.9×償却率×業務に供された月数÷12
「残存価額」は取得価額の10%で算出し、「償却率」は下記旧定額法の償却率を用います。
「業務に供された月数」は、月単位になります。毎月1日でも月をまたぐと1カ月としてカウントする必要がありますので注意してください。
【旧定額法の償却率】
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | ||||
年 | – | 11年 | 0.09 | 21年 | 0.048 | 31年 | 0.033 | 41年 | 0.025 | ||||
2年 | 0.5 | 12年 | 0.083 | 22年 | 0.046 | 32年 | 0.032 | 42年 | 0.024 | ||||
3年 | 0.333 | 13年 | 0.076 | 23年 | 0.044 | 33年 | 0.031 | 43年 | 0.024 | ||||
4年 | 0.25 | 14年 | 0.071 | 24年 | 0.042 | 34年 | 0.03 | 44年 | 0.023 | ||||
5年 | 0.2 | 15年 | 0.066 | 25年 | 0.04 | 35年 | 0.029 | 45年 | 0.023 | ||||
6年 | 0.166 | 16年 | 0.062 | 26年 | 0.039 | 36年 | 0.028 | 46年 | 0.022 | ||||
7年 | 0.142 | 17年 | 0.058 | 27年 | 0.037 | 37年 | 0.027 | 47年 | 0.022 | ||||
8年 | 0.125 | 18年 | 0.055 | 28年 | 0.036 | 38年 | 0.027 | 48年 | 0.021 | ||||
9年 | 0.111 | 19年 | 0.052 | 29年 | 0.035 | 39年 | 0.026 | 49年 | 0.021 | ||||
10年 | 0.1 | 20年 | 0.05 | 30年 | 0.034 | 40年 | 0.025 | 50年 | 0.02 |
※耐用年数については次章で解説しています。
2007年(平成19年)4月1日以降に取得した資産の計算式
減価償却費の計算方法は下記です。
減価償却費=建物購入価額×償却率×業務に供された月数÷12
償却率は、下記の新定額法の償却率を使って計算します。
【新定額法の償却率】
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | ||||
年 | – | 11年 | 0.091 | 21年 | 0.048 | 31年 | 0.033 | 41年 | 0.025 | ||||
2年 | 0.5 | 12年 | 0.084 | 22年 | 0.046 | 32年 | 0.032 | 42年 | 0.024 | ||||
3年 | 0.334 | 13年 | 0.077 | 23年 | 0.044 | 33年 | 0.031 | 43年 | 0.024 | ||||
4年 | 0.25 | 14年 | 0.072 | 24年 | 0.042 | 34年 | 0.03 | 44年 | 0.023 | ||||
5年 | 0.2 | 15年 | 0.067 | 25年 | 0.04 | 35年 | 0.029 | 45年 | 0.023 | ||||
6年 | 0.167 | 16年 | 0.063 | 26年 | 0.039 | 36年 | 0.028 | 46年 | 0.022 | ||||
7年 | 0.143 | 17年 | 0.059 | 27年 | 0.038 | 37年 | 0.028 | 47年 | 0.022 | ||||
8年 | 0.125 | 18年 | 0.055 | 28年 | 0.036 | 38年 | 0.027 | 48年 | 0.021 | ||||
9年 | 0.112 | 19年 | 0.053 | 29年 | 0.035 | 39年 | 0.026 | 49年 | 0.021 | ||||
10年 | 0.1 | 20年 | 0.05 | 30年 | 0.034 | 40年 | 0.025 | 50年 | 0.02 |
※耐用年数については次章で解説しています。
減価償却計算に必要な「耐用年数」の算出
減価償却の計算には、上記に表で掲載した償却率を用います。償却率は「耐用年数」に応じて異なりますので、その耐用年数の出し方について解説していきます。
新築で購入した物件の場合
下記表の法定耐用年数がそのまま耐用年数になります。
アパート建物構造 | 法定耐用年数(事業用) |
鉄筋コンクリート造 | 47年 |
鉄骨造(4mm超) | 34年 |
鉄骨造(3mm超) | 27年 |
鉄骨造(3mm以下) | 19年 |
木造 | 22年 |
木造モルタル | 20年 |
事業用とは、アパートなどの賃貸物件や店舗、事務所等を指し、マイホームやセカンドハウスは非事業用になりますので耐用年数は上記と異なります。
中古で購入し、築年数が法定耐用年数の一部を超えている場合
中古で購入し築年数が経過している場合は、上記①で掲載した法定耐用年数から経過年数を引き、下記の計算式にあてはめて算出します。
耐用年数=(法定耐用年数-経過年数)+経過年数×20%
例:築10年の鉄骨コンクリート造物件を購入した場合の耐用年数
(47年-10年)+10年×20%=耐用年数39年
この場合、新定額法の39年の償却率は0.026です。
この償却率を前章でご紹介した減価償却費の計算式にあてはめて計算します。
中古で購入し、築年数がすでに法定耐用年数を超えている場合の耐用年数
上記に記載した法定耐用年数一覧表の該当法定耐用年数を用いて、下記の計算式で算出します。
耐用年数=法定耐用年数×20%
例:築25年の木造物件を購入した場合の耐用年数
22年×20%=耐用年数4年
この場合、新定額法の4年の償却率は0.25です。
この償却率を前章でご紹介した減価償却費の計算式にあてはめて計算します。
減価償却費は譲渡所得に影響
アパートなどの売却が高値で成立したとしても、譲渡所得が大きくなることで想定外の譲渡所得税が課税されてしまうケースもあります。
そのような事態を防ぐために、減価償却費の計算や不動産譲渡所得税の計算について、早めに理解しておくことが大切です。
ご自身で計算したものが合っているのかどうかなど、ご不安に思われる方はお気軽に弊社「ジモット」へご相談ください。