不動産の生前贈与ってメリットがあるの?相続との違いについて解説
こんにちは。札幌の不動産会社「ジモット」の髙橋です。
家族や親族が遺産として相続可能な不動産を所有していた際に、亡くなった後に相続をするか、または生前贈与をするか、どちらが良い方法か考えた事はあるでしょうか。
もし相続可能な財産を保有している場合、どのような方法を取るかを事前に考えておくと、後から「こんなはずじゃなかったのに・・・」となる事を防げるかもしれません。
目次
生前贈与とは
相続は、亡くなったあとに財産を受け継ぐものですが、生前贈与とは、生きている間に財産を家族等に譲ることを言います。
生きていても亡くなった後でも、財産を譲るのは変わらないでしょうと思う方もいるかもしれませんが、生前贈与を税金対策として行う方もいます。
土地などの不動産でも生前贈与が可能です。
生前贈与と相続はどっちがお得?
では税金対策になるなら生前贈与をした方がいいのか、というと、財産状況などによりそれぞれのメリットデメリットが発生するため一概には判断できません。
贈与税は贈与対象となる不動産にかかる税金となりますが、相続税の場合は不動産以外にも受け継いだものや対象者等でも費用が変動します。
ただ一般的に、不動産の名義を変更するのみで考えると贈与税の方が割高になります。
贈与税とは
通常「贈与」と言われている、1年ごとに受けた贈与の合計金額で申告が必要になる暦年贈与の場合、基礎控除である110万円を超えた金額に対して、贈与税が発生します。
この贈与の税率は、両親や祖父母などの自分から見た直系の家族からの贈与としての特例税率と、それ以外の一般税率とがあり、特例税率の方が少し低くなっています。
一般税率には、兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子への贈与で子が未成年者の場合などが含まれます。
<一般税率>
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 |
300万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円 以下 |
1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
3,000万円 超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ー | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
<特例税率>
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 |
400万円 以下 |
600万円 以下 |
1,000万円 以下 |
1,500万円 以下 |
3,000万円 以下 |
4,500万円 以下 |
4,500万円 超 |
税率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ー | 10万円 | 30万円 | 90万円 | 190万円 | 265万円 | 415万円 | 640万円 |
たとえば、自分の母親から1,000万円相当の暦年贈与を受けて、他に贈与を受けていない場合、贈与税は「(1,000万円-110万円)×30%-90万円=177万円 と計算されます。
贈与税は、税務署に確定申告をした後、申告した税額を納めます。不動産の価格が基礎控除(110万円)を超える場合は、贈与のあった翌年に申告を行います。
相続時精算課税制度
贈与税を軽減する制度を選択することができます。
相続時精算課税は60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供や孫へ贈与する場合に選択することが可能です。
この相続時精算課税を選択すると、受け取った額の合計が2,500万円を超えるまで贈与税が無税となります。
一気にお得になったような気がしますが、この制度を利用すると、贈与時には贈与税がかかりませんが、実際に相続が発生したタイミングで贈与を受けた分について相続税が課税されます。
その上、相続時精算課税制度を利用すると上記の暦年贈与が利用できなくなるため、基礎控除も対象外となってしまうため注意が必要です。
後から暦年贈与に戻すことはできません。
この制度を利用する場合は、基本的には税金を相続時まで先送りにする、という事になるため、節税の効果が特別ある訳ではなく、実際に利用する方はあまり多くはありません。
ただし、不動産が贈与対象で、贈与から相続までの間に地価がものすごく上昇することが見込まれる等の場合ですと、将来的に節税効果があると考えて良いでしょう。
贈与税の配偶者控除
おしどり贈与と呼ばれる、配偶者に対する贈与の制度もあります。
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、暦年贈与の基礎控除110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できるという特例です。
こちらは、合計2,110万円まで贈与税がかからない事が大きなメリットとなります。
方法としては、マイホームの2,110万円分のみ持ち分を贈与しておく等があります。
例えば、生前に夫が妻に不動産を配偶者控除を利用して贈与した場合で、将来夫が亡くなった際には、既にに妻名義になっているマイホームは夫の相続財産とはならないため、遺産分割の対象にもなりませんし、相続税もかかりません。
また、持ち分が夫婦それぞれにあると、将来マイホームを売却した際に「居住用財産の3,000万円特別控除」をそれぞれで利用できるようになります。
これは自宅の売却利益から3,000万円差し引くという制度で、つまり最大6,000万円まで利用できるようになります。
不動産を生前贈与するメリットは
では、相続と贈与では税金以外にどんな違いが考えられるでしょうか。
相続となると、亡くなった後に残された遺族で遺産を分割する事になりますが、生前贈与の場合ですと、生きている間に前もって財産を渡す相手を特定できる事がメリットとして挙げられます。
不動産の相続は分割がしにくいため、相続では争いの元となってしまうケースもあります。後々の相続人同市のトラブルを防ぐためにも、事前に財産を渡しておくことは大きなメリットと言えるでしょう。
こんな場合は生前贈与が有利
将来不動産価値が上がる事が見込める土地
贈与税は、贈与が行われたときの評価額に対して課税されます。
相続税は所有者が亡くなった時点での評価額に対して課税されます。
現在は評価額の低い土地であっても、周辺の開発などが予定されていれば、将来的に価値が上がることが予想できます。
札幌は特に近年全国的にも地価が上昇し続けているため、立地の価値について1度きちんと調べてみる事をお勧めします。
アパート・マンションなどの収益物件
アパート・マンションを所有している場合には、上で説明した相続時精算課税制度を利用した生前贈与が、相続税対策として有効になると言えます。
生前贈与をしない場合には、今までに現金化された家賃収入は当然「財産」の一部として相続される事になりますが、アパート・マンションを生前に贈与することで、家賃収入を将来相続時に税金を精算する際の資金として貯めておくことができるようになります。
アパートやマンションを贈与する場合は、評価額が固定資産税評価額となるため、現在の地価よりもほぼ低くなります。さらに、借地権の割合分評価が減額されます。
現金で不動産と同額を贈与した場合と比べて、納税額を少なくすることができるため、収益物件の場合は有利となりやすいです。
生前贈与はしっかり制度を活用しよう
不動産を生前贈与する場合のメリットとデメリットについて解説しました。
税率だけで相続税と贈与税を比べると、生前贈与は不利に感じられるかもしれませんが、生前贈与は、仕組みや制度をしっかりと理解すれば有利になる事もあります。
特に単純に分割しづらい不動産は、相続トラブルを起こしやすいテーマです。
後々の問題を回避するためにも、家族でしっかりと対策を打って生前贈与について検討してみるのもよいでしょう。
ジモットでは、札幌や札幌近郊の戸建て、アパートの無料査定を行っています。
贈与を受けた後で不動産の売却を検討する場合も、是非お気軽に査定をご依頼ください。